12年5カ月間の拉致監禁裁判で画期的勝訴判決

東京高裁が総額2200万円の賠償命令

 12年5ヵ月にわたって都内のマンションなどに拉致監禁され脱会を強要された事件で、被害者の後藤徹さん(51)が事件に関与した親族などを相手取って損害賠償約2億円を求めて起こした裁判の控訴審判決が11月13日午後、東京高裁であり、一審に続き後藤さんが勝訴しました。賠償額 が約5倍に引き上げられたほか、一審では責任を問われなかったキリスト教牧師の関与が認定されるなど、画期的な判決となりました。

 須藤典明裁判長は、拉致監禁の事実認定において後藤さんの主張をほぼ全面的に受け入れ、12年5カ月にわたって後藤さんが「監禁状態」にあったと認定。一審被告である兄夫婦と妹の3人に対して総額2200万円の支払いを命じるとともに、同じく一審被告である職業的改宗活動家・宮村峻氏に対しては、上記損害のうち1100万円を、また新津福音キリスト教会(新潟市)の松永堡智牧師に対しては同440万円を連帯して支払うよう命じました。

 今年1月の一審判決で、東京地裁は被告である親族3人に対し総額483万円の支払いを命じ、宮村氏に対しては上記損害中96万円を連帯して支払うよう命令。一方、松永氏と松永氏が所属する日本同盟基督教団に対する請求は棄却しました。

 今回の判決で東京高裁は、後藤さんが1995年9月、都内の実家からワゴン車に乗せられて新潟市内のマンションに拉致されて以降、2008年2月に東京・荻窪のマンションから解放されるまでの約12年5ヵ月にわたり、「監禁」ないし「行動の自由の違法な制約」がなされていたと認定。その上で、松永氏については、後藤さんの家族の違法行為を「黙認」「鼓舞」したばかりか、「(後藤さんの)自由を制約して脱会の説得をすることを幇助していた」と判断。また、宮村氏についても「(後藤さんの)拘束について、これを理解した上で幇助していた」とし、さらに松永、宮村両氏は後藤さんに対して統一教会の信仰を棄てることを強要していたとして、「共同不法行為責任を負うべきである」と断じました。

 一方、3度にわたって抗議の断食を決行した後藤さんに対し、兄夫婦らが後藤さんに粗末な食事しか与えない“食事制裁”を行ったことについて、東京高裁は、後藤さんの「体調等に対する管理や配慮が十分ではなく、違法性の高いものになっていた」と判断しました。
 一審の東京地裁が、被告らの事実をねじまげた主張を一部採用し、被告らを利する認定判断を行っていたのに対し、今回の判決は、金額以外の点で極めて公正妥当な認定判断を行い、拉致監禁、脱会強要活動を断罪したもので、信教の自由の観点から高く評価できます。

 また、これまで統一教会信者に対する拉致監禁、脱会強要活動に対して、「親子の話し合い」といった弁明を採用してその違法性を減殺しようとする判決もありましたが、今回の判決によって、今後はこうした弁明は一切通用しなくなることが予想されます。

 今回の控訴審判決を受け、後藤さんは以下のコメントを発表しました。

 「31歳から44歳までの12年5カ月にわたり、同じ天井と壁を見るだけの毎日でした。現在の日本においてこのような事件が実際に起きるとは当初信じてもらえませんでしたが、一審判決を経て、今回より一層踏み込んだ判決を得ることができました。こうした犯罪が過去50年近く行われてきて約4300人が被害を受け、中には自殺に追い込まれた女性や、マンション6階から逃げようとして地面に落下し瀕死の重傷を負った男性もいます。私の裁判を通して、そのような現実を一人でも多くの方々に知って欲しいと思います」

夫婦拉致監禁・脱会強要事件、神戸市の牧師らを刑事告訴
幼子2人から引き離された被害者、警察によって解放

 広島市在住の統一教会信者夫婦が、今年7月26日から31日までの6日間、大阪市内のマンションの一室に拉致監禁され、脱会強要されたとして11月7日、神戸市の牧師らを広島西警察署に刑事告訴しました。

 7月26日、夫(43歳)は親族等から、入院中の親戚の見舞いに行こうと誘われワゴン車に乗せられて、見知らぬ男性の運転で大阪市淀川区内のマンションの一室に拉致監禁されました。
 続いて、長女(8歳)と長男(3歳)と共に広島市内の実家に招かれていていた妻(40歳)も、親族等から突然襲撃を受け、両腕・両足を縛られて寝袋に入れられ、さらに寝袋の上からも縛られてワゴン車に乗せられ、2人の子供達と引き離されたまま、夫が監禁されたのと同じマンションの一室に監禁されました。

 監禁場所には翌日からキリスト教神戸真教会の高澤守牧師らが訪れ、連日、統一教会の悪口や人格攻撃を行って信者夫婦に対する脱会を強要。夫婦は、暴力的に拉致監禁された上、幼い2人の子供達から無理矢理引き離され言い知れぬ苦しみを受けました。

 31日午前1時頃、妻が監禁犯の1人の携帯電話を使用して警察に通報。駆けつけた警察官によって夫婦は解放されました。
 夫婦は、今回の拉致監禁、脱会強要事件が高澤牧師らの主導で行われたことから、親族が今後2度と拉致監禁を行わないことなどを約束し示談に応じるなら親族を告訴対象から外す意思をもっていましたが、親族側がこれを拒否したため、親族も含めて刑事告訴をするに至りました。

 高澤牧師はこれまで数百件の脱会強要事件に関わり、被害者から2度にわたり刑事告訴され、いずれも「不起訴」(起訴猶予)とされましたが、民事訴訟では2度敗訴しています。
 司法機関の適切・迅速な対処によって、拉致監禁・脱会強要という深刻な人権侵害の撲滅につながることが大いに期待されます。