佐賀大学に対して損害賠償命令

統一教会信者への「信仰の自由」侵害を認定

 統一教会信者である佐賀大学の元女子学生(24才)とその両親が信仰の自由と名誉感情を著しく侵害されたとして、佐賀大学と同大学の森善宣准(よしのぶ)教授に対して損害賠償440万円を求めていた裁判の判決が4月25日午後、佐賀地裁であり、波多江真史裁判長は、大学に計8万8千円の支払いを命じました。

(この記事は、『VISION 2020』第30号〈5月30日号〉に掲載されました)

 提訴した元女子学生Aさんは6000双の祝福家庭の二世。被害にあった当時は佐賀大学3年生でしたが、現在は卒業して社会人として働いています。
 2012年2月10日、A さんはゼミ担当教員だった森准教授に呼び出されて研究室に行ったところ、森准教授から信仰について軽蔑・侮辱する発言を繰り返され、Aさんが加入していたCARP(全国大学原理研究会)や統一教会からの脱会を執拗に迫られました。さらに森准教授は、Aさんの両親の信仰にも言及。統一教会の合同結婚式は「犬猫の結婚」であり、原告らの家族の生活は「犬猫の暮らし」などと侮蔑しました。

 発言の撤回を求めましたが、受け入れられなかったため、AさんとAさんの両親は2012年5月、森准教授と佐賀大学に損害賠償として慰謝料などを求める訴えを佐賀地裁に起こしました。

 裁判でAさん側は、佐賀大学が教授会で「CARPに入会した学生には脱会を指導するように」との指示をしていたという森准教授自身の発言に基づき、森准教授の一連の行為は、教員による学生指導であると同時に、大学の指示によるものであり、佐賀大学にも賠償責任があると主張しました。

 一方、森准教授と佐賀大学は、双方とも不法行為はなかったと主張。さらに佐賀大学は、一連の侮蔑発言等の行為は森准教授の個人的な指導によるものであり、大学には賠償責任はないとの立場を示しました。

 判決の中で裁判所は、まず本件は「公権力の行使」に当たるとして、国家賠償法が適用されると認定。同法が適用されると、森准教授の発言が不法行為に当たるとしても、森准教授個人の責任は問われず、法的責任は佐賀大学のみが負うものとなります。
 次に、森准教授の行為が不法行為だったかどうかについて、Aさんに対しては信仰の自由に対する侵害および名誉感情に対する侵害に該当すると認定。Aさんの両親に対しても、名誉感情に対する侵害に該当するとして、いずれも不法行為の成立を認めました。

 その一方で判決は、Aさんが森准教授との会話を録音していたことを「CARPが促進していた、大学のカルト対策に対する情報収集活動の一環とみるのが相当である」と指摘。森准教授と面談する際、Aさんは「(森准教授が)統一協会の教義や合同結婚式を否定し、(Aさんに対して)統一協会の教義を信仰することをやめるよう説得することを十分予見」、「佐賀大学によるCARPや統一協会に対するカルト対策を攻撃するための材料を得ることを目的として」いたなどと「推認」。それを理由に、Aさんらの被った精神的苦痛は「さほど大きいものとはいえない」として、裁判所は佐賀大学に対し、Aさんには4万4千円、Aさんの両親にはそれぞれ2万2千円の合計8万8千円の支払いを命じました。

 今回の判決について、原告代理人の福本修也弁護士は25日午後に佐賀教会で行った記者会見で、「国家賠償法の枠組みの中で、森准教授の行為について明確に信仰の自由に対する侵害であり、名誉感情に対する侵害に該当するとして、不法行為の成立を認め、その損害賠償責任を佐賀大学に認めています。事実認定においては完全に勝訴したものと考えています」と高く評価。
 その一方で、「(森准教授は)あまりにもひどい内容を語っていたにもかかわらず、損害賠償額が非常に低い点については不満があります」と述べました。

 裁判所が、Aさんの録音行為が「カルト対策を攻撃するため」と「推認」している箇所に福本弁護士は言及。「森准教授は『Aちゃん大好き』といったメールをAさんに送りつけるなど、セクハラ的な行為をしていました。研究室では森准教授と二人きりになるため、Aさんは身を守るために録音していたのです」と反論。さらに「録音していなければ、訴訟提起すら難しい。録音されたからといって、違法性が低減されるというのは非常におかしな判断」と批判しています。

 判決を受け、Aさんは「不法行為が認められ、大学の責任が認められたことは評価します。そもそも、この事件は、大学の組織的な『カルト対策』の一環としてその延長上に起きたものです。今回の大学の責任を認める判決を機に、大学において信仰の自由を抑圧する『カルト対策』がなくなることを期待します」とコメント。

 Aさんの両親は「大学が組織的な宗教迫害を行い、私たち家族の尊厳を傷つけ侮辱した行為が法廷で断罪されたことについては、正当な判決であると評価しております。大学当局が深く反省し、二度とこのような事件が起きないよう希望します」と述べています。

 また、鴨野守・統一教会広報局長は、「真理を探究し、思想信条の自由を重んずべき大学において、二度とこのような人権侵害が行われないよう、強く求める。またマスコミの皆様には統一教会、CARP メンバーを拉致監禁し、脱会させ、報酬を得るというカルト利権集団が存在し、信仰の自由が著しく侵害されている事件にも関心を持ってもらいたい」と訴えています。