国連規約人権委員会、強制改宗問題に懸念を表明

日本に信教の自由を保障する有効な手段を講ずるよう勧告

国連欧州本部(スイス・ジュネーブ)

 スイス・ジュネーブの国連規約人権委員会は7月24日、日本政府に対して、「新宗教信者に対する拉致監禁強制棄教活動」に関して、正式に「懸念を表明する」ことを明らかにしました。

 「新宗教信者に対する拉致監禁強制棄教活動」とは、統一教会に反対する一部のキリスト教牧師や宮村峻氏などプロの「脱会屋」らが、組織的・計画的に統一教会信者を拉致監禁し、脱会・改宗するまで拘束し続ける活動を指すものです。

 24日に発表された国連人権委の「最終報告書」は、この問題について次のように指摘しています。
 「委員会は、新宗教運動の回心者を棄教させるための、彼らに対する家族による拉致および強制的な監禁についての報告を憂慮する。締約国は、全ての人が自ら選択する宗教又は信念を受け入れ又は有する自由を侵害するおそれのある強制を受けない権利を保障するための、有効な手段を講ずるべきである」

統一教会員に対する拉致監禁問題をテーマに国連欧州本部で行われたサイドイベント(2010年6月2日)

 統一教会信者が拉致監禁被害にあった事例はこれまで約4300件に上ります。今年1月には、後藤徹さんが12年5カ月にわたり親族らによって監禁され、棄教を強要されたとして損害賠償を求めた民事訴訟の判決があり、東京地裁は「社会通念上の限度を逸脱し、親族らは長期間、男性の自由を大きく制約した」と認定、後藤さんの親族や脱会屋の宮村被告に対して約483万円の支払いを命じました。

 この判決が主要日刊紙などで報道されたことで「統一教会信者に対する拉致監禁・強制改宗活動」の一端が知られる機会とはなりましたが、問題の深刻さと悲惨さを鑑みれば、日本の人権に対する意識は極めて遅れた状態であると言わざるを得ず、それが今回の国連人権委の「最終報告」における勧告になったと言えます。

嘆願書提出のため訪れたジュネーブ国際機関日本政府代表部で(2010年6月1日)

 さらに危惧すべきことは、長年にわたってこうした拉致監禁が放置されてきたことであり、今現在も同様の事件が続いているということです。ある宗教信者に対して、自由・人権から生命に至るまで完全に抑圧し、支配することが容認されるという、誤った認識が今後も続くのではないかという懸念です。

 これが、まさに今回、国連規約人権委員会が日本に対して行った人権状況に対する警告であると言えます。
 国連規約人権委員会とは、人権問題の専門家で構成される国連機関の一つで、7月15、16日に、日本の人権状況について審査を行い、その中で、日本に宗教と信条の自由権と、強制改宗されない権利に関する問題が提起され、今回の「最終報告書」がまとめられました。